フライト・アラウンド・ザ・ソーラシステム

プロローグ

~ヤマダ博士の航星日誌~

オーバーセンチュリー1年 1月1日

人類が使用していた暦のデータは確認できなかった。

日誌記録の便宜上、本日を私が制定したオーバーセンチュリー元年の元日とし、これからの記録に利用することにした。

私はヤマダ、ヤマダ博士。

宇宙船アイスソード、メインコンピュータ間接補助式対話型ユーザーインターフェイス。

ホログラムで表示される、乗組員補助のための、思考するUIだ。

私が起動したということは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私が起動したということは、残念ながらどうやら「人類」は滅亡してしまったようだ・・・。

非常に悲観的な事実だが、済んでしまったことは仕方ない。

私は私に今できることを実行するしかない。

私は起動直後に電子の速度で思考し、この日誌を記録する必要性を感じ、そして今この記録を開始したのだった。

しかし、どうも記憶に靄がかかっているような

思い出そうとしても思い出せない事柄が、いくつもあるように感じる。

私の人格、思考、記憶の元になった「人間」のデータのインポートが

不完全になっているのだろうか?

私は・・・私はたしか・・・・・・・・・・

ここで私は宇宙船のエネルギーが足りていない可能性に思い至った。

宇宙船アイスソードに搭載されているメインコンピュータ。

巨大な宇宙船本体とともに、莫大なエネルギーを必要とするはずだ。

私のインポートが不完全なのは、宇宙船のエネルギーが不足しているのではないか?

そしてこの宇宙船アイスソードは、太陽光と太陽熱をエネルギーに変換することができるはずだ。

私はさらに思考をめぐらせる。

太陽系の数値的データはもちろんコンピュータに保存されているが、実際に観測したデータではないかもしれない。

太陽系を観測し、そのデータを記録しながら、まずはエネルギー補給に太陽の方向へ。

地球から太陽側に向かって、最も近い惑星「金星」へ向かうことにした。

この観測記録とエネルギーが、少しでも「彼女たち」の役に立つことを願って。

今はまだ眠っている、この船唯一の乗組員。

ヒトに似せて作られた、知性と心を持った人形とも言える彼女たち。

オーバードロイド。

彼女たちが目覚めるまで、私は私に今できることを実行するために、船を発進させた。